結婚に愛はあるのか?
…沙織の言い分はこうだった。

せっかく始めた同居生活だったのに、

お兄ちゃんは邪魔するし、…自分も邪魔者のような気がして、


2人が、しっかり向き合う為には、私と兄が邪魔だと思った。

そこで考えたのが、お父さんが倒れて、私たち兄妹がその部屋から出て行く事だった。

それ以外の方法も考えたけど、陽介が帰ると言っても困るし、

愛がまた違うところに行っても困るし、心配だから。


苦肉の策として、そうすることを決めた。

実家に帰った兄は、かなり怒っていたけど、…仕方がないと言って、

承諾してくれた。・・・愛も気づいているかもしれないけど、

お兄ちゃんは、愛に惚れてる・・・。だから尚更、諦めてほしかった。

だから、実家に帰って、ずっとずっと、兄を説得した。


愛を諦めてほしいと。

2人の幸せを邪魔しちゃいけないと。

説得するのに、一週間かかった。

…やっと納得してくれた兄の口から、

『愛を諦める』その言葉が出た。



・・・そしてやっと今日、私にすべてを打ち明ける事を決め、

会社に来た…と。


「私たちの為に…ゴメン」

私は沙織の頭を下げた。
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