結婚に愛はあるのか?
「うん、赤ちゃんも、順調に育ってるみたい」

そう言って微笑むと、沙織も嬉しそうに微笑んだ。


「マンションまで送るわ。こんな時間まで仕事して、

あんまり無理しないでよ?体に障ったら大変なんだから」


「うん、気を付ける」

楽しく会話をしながら、沙織はマンションまで私を送り届けてくれた。

沙織と別れ、ふと、上を見上げる。


…只今の時刻、午後9時。

陽介は、先に帰ってきているようだ。部屋の明かりが点いていたから。

部屋に戻り、ドアを開けると、中からいい匂いが漂ってきた。


陽介が何か作ったようだ。

私は迷うことなくキッチンに向かう。そこには、

陽介が最後の味見をしているところで。


「あ、お帰り。遅かったな」

火を止め、私に近寄ってきた陽介は、私の頭を優しく撫でた。

「ただいま…いい匂い」

「さっき帰って来たばかりだから、大したものは作ってないけど、

お腹すいただろ?」


「うん、ぺっこぺこ」

そう言った笑うと、陽介もフッと笑った。
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