結婚に愛はあるのか?
奏の言葉に、陽介の顔が歪む。

「…まだ話してないよ」

陽介の答えに、奏が溜息をついた。


「勝手に結婚決めて、籍まで入れたんじゃ、

親父さんかんかんだろうな・・・俺達の会社ですら大反対だったのに」


「・・・もうすぐだ」


「・・・何が?」

奏と陽介の会話を黙って見守った。


「お腹にいる子供が、6か月に入れば、中絶なんて出来なくなる。

親父は反対できなくなる。それまでは言わないでいるつもりだ」


「…そう簡単に事が進むのか?」


「そう進んでもらわなきゃ、困るんだよ・・・

愛を・・・お腹の子を・・・悲しませずにすます方法はこれしかない」


…静まりかえった部屋。

私は息を呑んだ。…陽介のお父さんが、どれ程怖い存在なのか、

改めて知らされた気がした。

そんな父親に育てられた陽介が、なんだかとても不憫だった。




「陽介」

私は陽介の手を掴む。

陽介は握り返して微笑んだ。


「辛い思いはさせない。愛は、オレの大事な妻になったんだ。

頼りないかもしれないけど、全力で守るから」
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