結婚に愛はあるのか?
それから6か月に入るまで、私は会社と家の行き来のみで、

たまに家を出る時は、ちょっとした買いものくらいだった。

その間に、ガラリと変わったと言えば、沙織のマンションを出て、

陽介のマンションに引っ越した事だろうか。

・・・毎日が幸せだと感じる一方で、陽介の父親に対する不安は大きくなる。


どんどん大きくなるお腹に比例して。


…とうとう6か月に入り、

その週末。私は陽介に連れられ、実家へと来ていた。


「…やっぱり、帰りたいな」

不安が言葉になって現れる。


「大丈夫だよ。反対させるつもりはないから」

私の手を握り、陽介が囁いた。


大きなお屋敷。こんな家に入る事すら初めての私は、

不安でたまらない。

…中に入ると、お母さんが私たちを出迎えた。


「お帰り、…初めまして、陽介の母親です」

そう言って微笑んだのは、綺麗なマダム風な女性だった。

・・・その微笑みに似つかわしくない、瞳。

その瞳は決して笑ってなどいない、冷たい瞳で・・・・。

私は、作り笑いを浮かべるのが精一杯だった。
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