結婚に愛はあるのか?
応接室に通された私たちは、扉が開いた瞬間、

ゴクリと息を呑んだ。

…窓際には、外を眺めている男性が一人。

後姿だと言うのに、凄い威圧感で、私たちに気付き、

振り返った顔を見て、私は思わず手をお腹に当てた。

赤ちゃんに言い聞かせながら、本当は自分に言い聞かせるように、

『大丈夫・・・一緒に頑張ろうね』

そう心の中で呪文のように唱えていた。


「まぁ、そこに掛けなさい」

お父さんに言われ、私たちはソファーに腰を下ろす。


「初めまして、陽介の父、松田誠治です。貴女が、陽介の?」

「はい、初めまして。鈴木愛と言います」

私はお義父さんに会釈する。


「…お腹の子は、何か月になるんだ、陽介?」

「もう、6か月になりました。…俺達の大事な子です。後4か月後には、

生まれてきます」



「6か月か・・・それまで妊娠には気づかなかったのか?」

そう言ったお義父さんの目は、怒りで揺れている。


「妊娠初期にすぐに分かりましたよ」

陽介は平然と答える。

その態度に、お義父さんは、怒りを露わにする。
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