結婚に愛はあるのか?
「オレの事をただの一度も、愛したことのない両親の敷いたレールの上を

走るつもりはありません」


「陽介」


「・・・何を話してもきっと、何の解決にもならないでしょう。

だからこれで失礼します。今日は、私の大事な妻を紹介しに来ただけですから。

さぁ、行こうか」


そう言った陽介は、私の手をそっと引っ張り立たせる。

私はやるせない気持ちで、今にも泣き出しそうだった。

そんな私の肩を優しく抱き、陽介は部屋を出た。



「・・・あら、もうお帰りになるの陽介?」

お茶セットを持って来たお義母さんが、ひと声かけた。


「今日は挨拶に来ただけですから」

そう言った陽介は、その場を去ろうとする。


「陽介、待ちなさい」

お義母さんが私たちを止める。


「なんですか、母さん?」

そう言った陽介が振り返る。

…お義母さんの瞳は、とても切なげで、私は少し驚いた。

最初の時の瞳とは真逆だったから。



「貴方は、私とお父さんのようにならないで・・・・

その子を、幸せにしてあげなさい・・・いいわね?」


「・・・・」

お義母さんの言葉は、陽介には理解できなかった。
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