結婚に愛はあるのか?
「陽介、来てくれたのね・・・愛さんも」

そう言ったお義母さんは、私の軽く頭を下げた。

私もそれに応えるように頭を下げる。



「松田さん、検査結果が出ましたのでこちらへ」

看護師が現れ、陽介とお義母さんは別室に通された。


…病室に残った私は、お義父さんの眠るベッドの横の椅子に腰かけた。


…とてもやつれた顔。

挨拶に行ったときのように、凛々しい顔つきではなかった。

・・・大したことがなければいいと思いながら、私はお義父さんの手を、

そっと掴んだ。


…ピクッ。

お義父さんの手が少しだけ動いたい。


「…お義父さん」

…私の声に反応するように、お義父さんは目を開けた。

そして、私の方を見て・・・・少しだけ微笑んだ。


・・・初めて見るその微笑みは、あの時とは真逆の、安心できる、

柔らかな微笑みだった。


「…陽介・・は?」

マスクをずらしてそう問いかけられた。
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