結婚に愛はあるのか?
「主治医の所です」

そう言って、私はお義父さんから手を離そうとした。

・・・が、お義父さんは、私の手をキュッと掴んだので、

離す事を止めた。


「…愛さんと言ったね」

「・・・はい」

ふうっとため息をついたお父さん。


「もう少し、お休みになられた方がいいんじゃありませんか?

顔色がすぐれないから」

心配な顔でお義父さんを見つめる。


「陽介がいない時に、話しておきたいんだ」

「・・・」

陽介がいない時。その言葉が引っかかる。

私は黙ったまま、お義父さんの顔をジッと見つめ、次の言葉を待った。



「…初めて会ったのに、あの時は、失礼な事を言ってすまなかったね」

「…お義父さん」

思ってもいなかった言葉に、目を見開く。


「妻とも、色々あってね・・・君や陽介の事、妻の事、色々考えさせられた。

…この前の言葉は撤回させてもらえるだろうか?愛さんを傷つけたことは、

本当に反省してる」


何も言い返せなくて…私はただ、お義父さんを見つめるだけだった。
< 133 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop