結婚に愛はあるのか?
「おはよ陽介。…どうしたこんな朝早くに会社に呼び出して」

社長室。オレは奏を早朝に呼び出した。


「悪いな、大事な話があって」

「…なんだよ、改まって」



・・・しばらくの沈黙の後、オレは重い口を開いた。


「松田商事の社長が倒れた」

「…親父さんが?!」

オレの言葉に当然ながら驚いている奏。


「社長の命も残り少ない」

「…そんなに悪いのか?」

奏の言葉に頷いた。


「…絶対にないと思ってたんだ、オレには奏と興したこの会社がある。

…でも、社長の子供はオレしかいないんだよな」

そう言って力なく笑う。


「…後を継ぐんだな」

奏は静かに言った。

オレはそれに応えるように頷いて見せた。


「ま、それは避けては通れない道、だよな」

「…認めてくれるのか?」

「認めるも認めないも、お前は松田誠治のたった一人の息子だろ?

松田商事の社長になるのは当然の事だ。」


「…この会社の事なんだけどな」

言いかけて、奏がそれを止めた。
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