結婚に愛はあるのか?
この子も、・・・そして私も。

陽介には、愛されてなんかいない。

愛なんて、この世に存在しないんだから。


こんな卑屈な私に、赤ちゃんは育てられない。


「だから、陽介は何も心配しないで。

・・・私の事も忘れていいから」

震える手を、何とか握りしめ、そう言った私は、

陽介の家を出た。


…陽介は何も言わなかった。

やっぱり私の事なんか、愛してない。

ただ、一時のお遊びの相手。

愛されないこの子は、この世に来ちゃいけない。


家を出た瞬間、その場に座り込んだ。

声も出さずに、泣いた。

・・・私は、この子が愛おしいと・・・

陽介が愛おしいと、どこかで思っていたのかもしれない。



…明日、おろす予約をしなければいけなくなった。


帰り道、どしゃぶりの雨の中、

電車で帰るでもなく・・・

タクシーを掴まえる事もなく・・・

ただ泣きながら、家までひたすら歩いて帰った。
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