結婚に愛はあるのか?
おろすと言おうとしたのに、先生は、病室を出ていってしまった。

…病室には、私と陽介の二人だけ。


「何で、来たの?」

「・・・ここに連れてくるため」


「何で、産むことになってるの?」

「オレがそう決めたから」


「私言ったよね?・・・おろすからって」

「そんなことさせない」


「愛が決めろって言ったくせに」

「思ってた言葉と違ったから」

…それ以上、2人の口から何も出なかった。


…本当は、産んでみたかった。

どんな赤ちゃんが生まれるんだろうって。

どんな子供になるんだろうって。

どんな大人になっていくんだろうって。


心の片隅で、考えていた。


でも、怖かった。

愛されていない私が、この子を愛せるかどうか。

・・・何より、陽介が産めって言ってくれるのか、

それが一番怖かった。


『好きだ』…『愛してる』・・・。

その言葉を、陽介は絶対に口にしないから。
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