結婚に愛はあるのか?
「産まない、産めないよ」

私は布団を深くかぶり、陽介に言った。


「…どうしてそんなに産みたくない?」

「・・・」

陽介に、私の生い立ちなんて話してない。

だって、付き合ってたったの1か月。

・・・しかも、一時的な気まぐれの付き合いだと

そう思い込んでいたから、話すつもりもなかった。



「私・・・赤ちゃんを愛する自信がない。

陽介を愛する自信もない・・・」


…布団がかすかに震えた。

泣いているから。…苦しいから。


「それを全部オレが引き受けると言ったら?」

「・・・」

・・・全部引き受ける?

陽介の言っている意味が分からない。


「赤ちゃんも、愛もすべてオレが引き受ける」

そう言った陽介は、布団の上に、手を置いた。

…薄い布団のせいか、陽介の温かさが伝わってくる。

その温かさに、胸までもが温かくなる気がした。


それでも、陽介を受け入れる事が出来なかった。


「…ゴメン、帰って。

お願いだから、一人にして・・・」

そう言うのが精一杯だった。
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