結婚に愛はあるのか?
グッと、布団の上で、手を握りしめるのが分かった。

それでも私は、布団から出られなかった。

「わかった…でも、明日また、必ず来るから」

そう言って、陽介は病室を出ていった。


・・・ドアが静かに閉まり、

私はそっと布団から顔を出した。

…病室には、陽介の香水の残り香が残っていた。


…どうして、この香りだけは、

気持ち悪くならないんだろう・・・

…今私は、つわりの真っ最中だった。


どんな匂いを嗅いでも気持ちが悪くなる。

ただ大丈夫だったのは、柑橘系の香りだけ。


…でも、陽介の香りは、甘い香りで。

気持ち悪くなるはずなのに、それだけはならなかった。


・・・赤ちゃんが、陽介を求めているのかな?

赤ちゃんの半分は、陽介でできているから。


・・・私も陽介を求めてる?

…陽介のすべてを、陽介の心も体もすべて。


それなのに、近づけば怖くて離れてしまう。


この葛藤が、私を一段と弱らせていく。
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