結婚に愛はあるのか?
「大丈夫です・・・だいぶ良くなってきましたから。

おかまいなく」

口ではそう言っていたが、体調はさっきよりも

悪化しているようだった。



「…全然大丈夫に見えないんですけど?

家まで送りますから、家、どこですか?」

「そんな、いいです」

消え入りそうな声で断るも、男の人は、頑として送るの一点張り。

・・・正直、送ってもらった方が、今の状態では、

一人では帰れない。


「オレ、この近くの遠藤コーポレーションの遠藤と言います。

全く怪しい者じゃないんで、言うことを聞いてください。

このまま放っておいたら、貴女は倒れてしまいそうだ」

そう言うと、遠藤と名乗った男は、私を立たせ、支えると、

駅の外にある、タクシーに乗り込んだ。


…見ず知らずの人に、こうも親切にされるのは、慣れていない。

若干の不安を抱きつつも、気分が悪く、

気が付けば、遠藤の肩に、頭を乗せていた。



「貴女が言ってた住所に、着きましたよ。

入り口まで連れて行ったら、帰りますから」

…遠藤の優しい微笑みに、小さく頷いた。


…遠藤は、本当に私を送っただけで、

サッサと帰っていった。

なんていい人なのかしら…そう思わずにいられなかった。
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