結婚に愛はあるのか?
「沙織のお父さん、大丈夫かな・・・」

椅子に座り、ポツリとつぶやく。

すると、陽介は、優しい表情で私を見つめた。


「…きっと大丈夫だよ。愛は、何も心配しなくていい。

沙織の事だから、何かあれば連絡してくれるだろうし・・・。

ほら、それより、ご飯食べよう、お腹の子供にも、栄養あげなきゃ」


「…でも、なんだか心配で、食欲が」

…それは本当の事で、心配が先に立って、食欲が出なかった。


「少しでいいよ。何か食べなきゃ、愛の体が持たない」

「・・・うん」

陽介の優しい口調に、少しずつ食事を取り始める。

…でもやっぱり半分くらいしか食べられなくて。

それでも、陽介はニコッと笑って、


「よく食べました」

そう言って立ち上がると、私の頭を優しく撫で、食事の後片付けを始めた。


「あ、私が」

「いいから、座ってろ。後片付けくらいどうってことない。愛は、ゆっくりしてなさい。

あ、それか、お風呂に入ってきたらいい。

ゆっくり温まってきたらいいよ」

それだけ言うと、食器をキッチンに持っていき、食器を洗い始めた。

…私はしばらく、陽介の事を見ていた。

男の人の割に、家事は得意なようだ。
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