結婚に愛はあるのか?
そんな自分に戸惑い、愛にどう接していいか

正直分からなかったと。・・・妊娠を聞かされた時も、

驚きはしたが、それより嬉しさが勝っていた。

愛は、きっと産んでくれると、そう信じて、産むか産まないかの選択をさせた。

でも、愛の答えは全く逆だった。

…やっと産んでくれると言ったのに、自分の前から姿を消してしまって。

どれだけ探し回ったか。

・・・まさか、こんなに近い場所にいたとは思いもしなかった。

また、こうやって出会えたと言う事は、運命だと信じ。

赤ちゃんも、愛も、この手で守ると心底思った。


…それが、陽介のすべてだった。


私は、胸が詰まった。

不器用な陽介は、精一杯、私を愛してくれていた。

言葉にできなくても、態度で示そうと、努力していたのに、

私は陽介の何も見ていなかった。


「・・・愛、君も自分の事をオレに教えて。

誰も愛せないと言った・・・その理由が知りたいんだ。

何も出来ないかもしれない・・・でも、それを受け止め、包み込むことは

出来るから・・・」


そう言ってくれた陽介の顔を見て、

心の中に、明かりが灯った気がした。
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