結婚に愛はあるのか?
「大好きだった両親が、目の前で罵り合い、

あんなに愛し合っていたはずの二人は、互いに浮気し、

最後には別れてしまった。…それを経験したのは私じゃないけど、

目の前で見せられたあの光景が、焼き付いて離れない・・・

もし、本気で誰かを愛してしまったら、両親のように、私もなってしまうかもしれない。

そう思ったら、誰も愛せなくなった・・・やっと見つけた人ですら」


「…やっと見つけた人?」

「・・・」

…それは貴方よ、陽介。

やっと心から愛せるような気がした。

でも、このトラウマがどうしても邪魔をする・・・。

愛が壊れるくらいなら、最初から好きにならなければ・・・・。


「…たくさん苦しんだんだな。本当に辛かったよな・・・。

オレは後継ぎとしてしか育てられなかったから、両親から愛情を感じたことはなかった。

でも、両親以外の人がオレを支えてくれた、特に友達が。

それでもいいと思うんだ。両親でなくても、友人や恋人がその人を幸せにしてやれるなら。

愛のすべての苦しみや辛さを消し去ることはできないかもしれない、でも・・・

オレのすべてで、愛を包み込んで慈しむよ」


そう言った陽介は、私を優しく包み込むように抱きしめた。

私は咳を切ったように泣き出した。

・・・泣いて、泣いて、泣いて。

今までの苦しみや悲しみを洗い流すかのように・・・。
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