極上ショコラ【短】
「撮影、お疲れ様でした」


「君は確か、篠原さんの担当者の……。いやぁ、君にも色々と世話になったね」


社交辞令に微笑みを返し、映画への賞賛と感想の言葉を並べた。


いつの間にか篠原の腕にセリナさんの細い腕が絡まっていて、思わず顔が引き攣りそうになったけど…


「セリナさんも、長い間お疲れ様でした。セリナさんの演技、とても素敵でした」


必死に平静を装い、社会人になってから培って来た笑顔を貼り付けた。


「ありがとう」


ようやくあたしを見たセリナさんがニッコリと笑い、程なくして篠原と監督が談笑を終えたところで彼女が再びあたしと目を合わせた。


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