極上ショコラ【短】
「ねぇ」


テレビや雑誌で見るものと同じ笑顔なのに嫌悪感を抱いてしまったのは、きっと絡められたままの腕が視界に入っているから。


篠原を見れば眉に不機嫌さが表れていたけど、セリナさんは彼の微妙な反応には気付かないらしい。


「少し、篠原先生をお借りしてもいいかしら?」


その上、よくわからない質問を投げ掛けられた。


どうしてそんな事を訊かれたのかは理解出来ないけど、そもそも自分(アタシ)に判断をする権限は無い。


「あたしはただの担当者ですから……。先生に伺って下さい」


何とか笑みを浮かべたままのあたしに、セリナさんが満足げに瞳を細める。


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