極上ショコラ【短】
こんな風にあたしの心を捉えて離さない男性(ヒト)を、心の底から愛おしいと思う。


逃げたくて、逃げられなくて。


そんな始まりを人生最大の失態だと思っていた事なんて、もうすっかり忘れてしまっていて。


篠原と付き合うなんて考えた事も無かったのに、今となっては彼のいない人生の方が考えられない。


身を焦がすような恋を知ったあたしは、きっともう葛城(カツラギ)龍司から離れられない。


こんなにも心を捉えるのなら、もういっその事骨の髄まで溶かして欲しい……


それ故に、頭の片隅でそんな病的な事まで考えてしまっている自分自身に、自嘲混じりの笑みが零れた。


< 70 / 77 >

この作品をシェア

pagetop