祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
イノリは自転車を押して華月と公園を出ると、並んで歩きながら家路を目指した。




「華月はいい加減男をとっかえひっかえすんのやめろよ。妹を見習え」


「美月はモテないからそういう事が出来ないだけよ」


「キヨは何気にモテるぞ。現にケンがベタ惚れだ」




イノリの言葉に少し顔をしかめる華月。





「…祈も美月が好きなの?」


「あぁ。キヨしか可愛いと想えないくらいだからな。でも、大切過ぎるから付き合ったりは絶対しねぇけどな」


「自分のものになったら、支配しそうで恐いから向き合わないってこと?……私もそんな風に誰かに愛されたいな。こんな性格になった今じゃ、もう遅いけど」




華月は寂しそうに呟くと携帯を取り出し、誰かに電話を掛けた。





「もしもし?今暇?…うん。今日ならいいよ。……うん、わかった。7時に駅前のラブホで」




華月が電話を切ると、イノリは華月を睨みつけた。





「お前、そんなんでいいのか?絶対幸せになんかなれねぇぞ。誰かに大切にされて愛されたいなら、まずお前が変われ」




イノリはそう言い捨てると、華月から離れて歩き出した。


華月はイノリの後を追うと背中に抱きつく。





「…っ!?何だよ、離せ!」

「抱いて」

「は!?何言ってんだよ、お前。俺をそこらの男と同じ扱いすんな」




イノリが華月を振り払うと、華月は涙を浮かべながら上目遣いでイノリを見つめる。


さっき殴られた頬が赤い。
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