祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「私を美月だと思っていいから。一度だけでいいから抱いてよ。…祈が抱いてくれたら私、変われる気がする。だから私をあなたの初めての女にしてよ」



華月から香る匂いは、キヨと同じ家の匂い。


その匂いがイノリの男の欲に火をつける。





「祈が今、私を見捨てたら美月に変な男紹介するわよ。…さぁどうする。自分を守る?美月を守る?」


「……そんなの決まってんだろ。俺は生まれた時からキヨを守るように出来てんだよ!」



イノリは華月と自分の部屋に入ると、キヨの匂いがする華月にキヨを重ねて見ながら、華月を抱いた。





「…っ…キヨ…。キ…ヨっ…!!」




抑え切れなくなっていた欲をぶつけるかのように何度も何度も…


気が狂いそうだった。




この時、華月の口車に乗らなくたって、本当に華月がキヨに変な男を紹介しても、俺がキヨを守ってやればいいだけの話だったんだ。


俺は余計な事をしたんだな……

バカみてぇ…






行為が終わった後、イノリはシーツに顔を埋めながら泣いていた。



本物のキヨを抱けない虚しさ。
彼女でもない女性を抱いた罪悪感。

色んな感情が混じり合い、涙になって零れ落ちた。




「ねぇ知ってる?初めての相手って一生忘れられないんだって」


「…俺は忘れる。こんな不本意な行為なんて」


「無駄よ。あなたは私に感じていたわ。忘れられないくらいにね。…美月も可哀想に。イノリが私とヤった事知ったら美月悲しむわよ」


「何が言いたい」


「祈は自分も美月も守れなかったって言いたいの。祈なんかに美月を幸せにする権利はない」




華月はそれだけ言うと、服を着てイノリの部屋から出て行った。
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