祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
イノリは不甲斐ない自分に腹が立ち、思い切り壁を殴りつけた。



華月はおかしい。
あいつはただの性欲にまみれたメス猫だ。


やることが全て間違っている。




…でも正しい事も言った。


“初めての相手は忘れられない”



確かにそうだ。

忘れられないから俺はその後も幾度となく、華月を抱く事になった。



それが最悪な結果を招く事になるとも知らずに。







あれから少し時が経った頃だった。



「キヨから聞いた。ガキが出来たって本当か?」



イノリは華月の部屋を訪れた。


華月は俯きながら泣いている。




「華月、どうなんだよ。…俺の子どもなのか?」

「多分。祈のだと想う…」




イノリはどうしていいのかわからなかった。


俺がどうにかしてやると胸を張って言えるほど、金銭的にも人間的にもまだまだ子どもだったから。





「…安心してよ。責任取れなんて言わないから。私、医者と結婚するの。彼を騙す形になるけど…」


「本当に結婚しちまうのか?俺が大人になるまで待ってはくれないのか?」


「私の事なんて、これっぽっちも好きじゃないクセに。それに祈には美月がいるじゃない。……一度祈の人生をめちゃくちゃにした私は、あなたに愛される資格なんかないわ」
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