祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「イノリっ…!!イノリ!!」

「キヨ…」




何が2人を引き離そうとするのだろうか…。

何の障害が2人の間にあるというのだろうか…。



離れたり、戻ったりそんなやり取りを繰り返す2人に未来はあるのだろうか。





「…嘘だよ、イノリ。私…大学辞めるの。もうあなたとは会わない」



キヨはイノリから体を離す。


最後に大好きな人のぬくもりを感じられ、もう心残りはなかった。





「大学を辞める?なんだよ、いきなり…」


「イノリしかいなかった世界から出て、1人で歩きたいの。…それにカンナを裏切った私は、ここにいられないから。

イノリだって今ここで私と向き合っても、またいなくなる。イノリはいつだって私から逃げていくもの」



「もう…逃げない!だからここにいろ」




イノリはキヨの体を揺さぶる。

しかしキヨは首を横に振る事しかしない。






「私達は現実から逃げすぎた。過去の問題はその時解決しなきゃ、もう解決なんて出来ないよ」


「そんな事ねぇよ!今からだって間に合う!!」


「もう遅いよ…。だから…イノリとさよならする。私…」




キヨはイノリを見つめた。



何があっても愛し続けた男性を、記憶に焼き付ける為に見つめ続けた。




その時、カゼとカンナを大学に送ったケンが帰ってきた。


イノリの存在に気付くと、ケンは咄嗟に柱の影に隠れる。
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