祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「私…ケンと付き合うよ。ケンは優しいし絶対私を裏切らない。だからケンと歩いていくって決めたの」


「…それでお前は幸せなのか?本当にそれでいいのか?」



キヨは頷く。


もう傷付きたくない。
誰かを傷付けたとしても…

それがキヨの本音だった。





「本当に遅すぎたんだな、俺。…あんな振り回しといて今更都合の良すぎる話だよな。ごめんな、キヨ。…大好きだよ」




イノリはそれだけ言うと家から出て行った。




何度も向き合えるチャンスはあったのに、それから逃げてきた2人。


向き合える時に向き合わなかった関係は、もう向き合う事は出来ない。




「…っ…!イノリっ…イノリ!!大好きだよ…イノリ…」



キヨは両手で自分を抱きしめると、床に膝をついて泣いた。


伝え切れなかった分の想いを呟きながら…。





「………」


ケンはただ、その姿を影から見つめる事しか出来なかった。
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