祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「そうだ。俺、今度ライブやるからキヨ観に来てよ。気晴らしにもなると思うし」

「うん、必ず行くよ」




キヨが頷くとケンは足でリズムを取りながら、鼻歌を口ずさみ始めた。



ケンの背中はイノリに比べて細く小さい。

けれど、彼の愛情は誰よりも大きくて温かい。




ケンの彼女になったら幸せになれる。

絶対に傷付く事もない。




きっと好きになる。

自分でも驚く程に彼に夢中になれるはず…





キヨは自分にそう言い聞かせると、楽しそうに鼻歌を歌うケンの背中に額を寄せた。




「どうした?眠たくなった?」

「違うよ。ただ…ケンにくっついていたくて」

「可愛いなぁ、キヨは。こんな可愛い子を振り回したバカな男が哀れで仕方ないよ」




ケンは悪戯に笑うと、キヨに体を向けて額と額をくっつけた。





「…俺はキヨが好きだよ。でもキヨに無理はして欲しくない。イノリを諦められるまで何も求めないから、キヨはそのままでいてよ」




ケンはキヨの頭に手を置くと、立ち上がってコーヒーを淹れにキッチンへと向かった。
< 152 / 479 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop