祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「あのね私、離婚したの。それで今度再婚するわ」

「離婚!?再婚!?お姉ちゃん、いつの間に…」

「私は1人と長続きしないみたいね。すぐに熱が冷めちゃうのよ」




キヨは何となく悟った。


華月はイノリと再婚するのだろうと…。






「…再婚相手ってイノリ?」




華月は首を振る。

キヨは安堵からか涙が出そうになった。



もうイノリの事なんて忘れないといけないと頭では分かっているのに、心が理解しようとしない。






「私と祈はそんな関係じゃないわ。祈は相談に乗ってくれてただけよ。体の関係もあの頃以来ないわ」

「でも、イノリはお姉ちゃんの事…」




キヨが俯くと、華月は苦笑いしながらため息をついた。





「そういえば話してなかったわね。あのね、私の子どもは祈の子じゃないわ。血液型が違うもの。…ずっと美月と祈を悩ませてしまったわね。ごめんなさい」




イノリの子どもじゃない…?






「でもイノリは自分の子どもだと思ってるよ?凄く…責任を感じてた」




キヨは今まで幾度と無く、それが理由で拒まれてきた事を知っている。




華月がイノリとあんな事をしなければ

華月が妊娠なんかしなければ…



何度そう思った事だろう。





でも、実の姉である華月を憎めなければ恨む事も出来ないから、辛い。





「祈にこの事を話したのは最近なの。美月と風くんが祈のアパートに来た時にね。祈があんなに悩んでるとは思わなくて…」


「え?イノリも知ってるの?…じゃあなんでイノリはあんなに苦しんでいるの…」


「それは美月が1番よくわかってるんじゃないの?」





キヨは様々なイノリの言動を思い返した。
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