祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「そんな無責任な事出来ない。…私、ケンを裏切れないよ。いつも私がイノリの事で絶望に立たされるとケンが助け出してくれたの。そんな優しいケンを裏切るなんて出来ないよ」


「好きでもないのにそばにいるのは健斗くんにとって酷よ。優しいのなら尚更。

美月が祈を想いながら無理して一緒にいるとわかったら、健斗くんはもっと傷付くわ」


「…大丈夫だよ。私きっとケンを好きになれる。ううん、好きになるんだ」




キヨは指で涙を拭いながら話す。



誰かに優しくして欲しい時に優しくしてくれたケンを裏切れるわけがない。


キヨはそう思った。





「祈の事本当にいいの?私は知ってるわ。美月がずっと祈を想ってた事。そんなに簡単に諦められる想いじゃないでしょ」


「お姉ちゃんがいけないんだ!お姉ちゃんがいなければイノリと私は幸せになってたよ!!」




キヨはそう叫ぶと、口を手で覆った。





「…そうよね。私があなた達の人生をめちゃくちゃにしてしまった…」


「違っ…!お姉ちゃんごめん!!私ひどい事言った。私はお姉ちゃんを責める権利なんかないのに」


「本当の事だからいいのよ。あの頃の私は何をやっていたんだろう…。
私は嫌だったんだと思う。私は誰からも心から愛されないのに、妹の美月は祈に心底愛されている。それが嫌だった…。だからあんな事を…」




華月は頭を抱えて俯くとため息を吐いた。




過ぎ去ったことをどれだけ悔やんでも変える事は出来ない。


だから人は後悔をする。
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