祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
この世にはどれくらいの人が、間違いを犯さず正しく生きているのだろうか。


そんな人間などきっといない。



人間なんて所詮不完全で汚い生き物だから…。





「…お姉ちゃん、話してくれてありがとう。今の私はそれだけで満足してるよ」


「本当にごめんなさい…」


「じゃあもし、イノリと会う機会があったら伝えてくれる?『今までの過ちを許してあげるから、イノリも自分を解放してあげて』って。それを伝えてくれたらお姉ちゃんの事許すよ」




涙ぐみながら頷く華月を見るとキヨは伝票を持って精算をし、カフェから出て行った。





もう過去を振り返らない。
もうイノリを想わない。




もう会えなくても、会わなくても

ずっと祈り続けるから


イノリも幸せになってほしい。






まだイノリとの日々を思い出すと泣けてくるけど


きっともうすぐ笑えるようになるから…






だからイノリも

あの頃のように笑って…。






キヨは涙で輝く空を見上げながらそう祈っていた。





「ただいま」

「おかえり、キヨ♪カンナとカゼ来てるよ」

「…え?」




キヨが部屋に入ると、まだ段ボールが置かれたままのリビングにカンナとカゼが座っていた。
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