祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
居酒屋からの帰り道。

ふらつくカゼを抱えるカンナの後ろを歩くキヨとケン。



「いつの間にイノリ帰ったんだよ。挨拶くらいしていけよなぁ」



ポリポリと頭を掻くケンを見て、キヨは話し出す。




「…イノリへの想いをちゃんと断ち切ったよ。イノリが…断ち切らせてくれた」


「そっか。イノリは最後までキヨには優しかったんだな。不憫に思うくらいキヨの事になると一生懸命だからな、あいつ」


「そうだね。優し過ぎてずっと苦しんでたんだよね、イノリは」


「まぁ…安心したよ。イノリに会ったらキヨはまた、イノリに惹かれちゃうんじゃないかって思ったから」



ちょっとした賭けだったんだよ、と
ケンが笑いながら歩くと、キヨは足を止める。



前を歩いているカゼとカンナが楽しそうに笑い合っている姿が目に映った。




「キヨ?どうしたの?」



ケンが立ち止まるキヨに振り向くと、キヨは顔を赤くしながらケンを見つめていた。




イノリを見つめていたキヨの瞳を知っているケン。


今、その瞳で自分が見つめられている。
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