祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
4人で引っ張ると、ゆっくりとキヨが持ち上がり斜面から引き上げられた。




「はぁはぁ…キヨ、大丈夫か?」

「うぁぁぁぁん!恐かったーっ!!帽子、崖に落ちちゃったぁ!!」

「もうキヨは。本当にやんちゃなんだから」




カンナとケンは苦笑いしながらキヨを見つめていた。


泣き出すキヨの頭をイノリが撫でる。




「…っ!!カゼはっ!?カゼ大丈夫?痛い所ない?」




キヨは涙を拭うと、斜面の前でぐったりと寝そべるカゼに駆け寄った。





「………キヨが無事ならそれでいい」

「うぇぇっ…カゼ、ありがとぉ」




カゼはキヨの頭をポンと叩くと立ち上がった。




「………のど渇いた。河原いこ」



河原へ向かうカゼの後を追う4人。


イノリは泣きじゃくるキヨと手を繋ぎながら歩く。





田んぼから河原までの道のりは5人の泥の足跡が平行線に並んでいた。
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