祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「………俺は本当にキヨと結婚するつもりでいた。ただキヨの心が俺になかっただけ」


「…今日はお喋りだね、カゼ」


「………うん。そうだね」




今はまだイノリのいない日々を愛せないけど


いつか…


全てを愛せるようになると思う。





もう少し
大人になれた時に必ず…。






「………キヨ、俺には素直になれる?」

「…うん。嘘ついたってカゼにはバレちゃうみたいだからね」

「………じゃあ、もし流れ星が本当に願いを叶えてくれるなら何を願う?」




もし流れ星が

本当に願いを叶えてくれるなら

何を願う?








幼稚園児の頃、生まれて初めて5人一緒に星を見た時に呟いたカゼの言葉。


キヨが大好きなカゼの言葉。




キヨは滲んでいく星を眺めながら小さな声で呟いた。




「…イの付く人の…お嫁さん…」


「………キヨ」




カゼは目の前で小さく震えながら泣くキヨを抱きしめた。


触れ合う頬に伝う涙。




「………俺は幸せになれなくていいのに。キヨに幸せをあげるのに」


「カゼの幸せはカンナに分けてあげて。私は…優しいカゼがいるから、カンナとケンがいるから幸せだよ」




それから無言のままその場に佇んでいたキヨとカゼは、暫くして東京へと帰った。





カゼがいる。

全てを理解してくれるカゼがいる。


だから大丈夫。






そう思えたのに…
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