祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
英語が好きなカンナは洋楽のコーナーに、カゼは何故かDVD売り場に行きサッカーのDVDを眺めていた。



「………サッカーしたいな」



カゼがケースを手に取りながら呟くと、不意に肩を叩かれた。




「風?」



後ろを振り向くとそこには義理の姉、美咲が立っていた。




「………美咲さん?すっごい偶然。…痩せた?」

「うん。海が亡くなった事知ってから食が進まなくて」

「………誰に聞いた、兄貴の事」

「お義母さんよ。この前連絡がきて。…1年も前に亡くなってたなんて知らなかった」



兄の死を彼女の為に黙っていたカゼ。


その事実を知ってしまった彼女は、誰が見てもわかる程やつれていた。




「風を見てると…海がそこにいる気がする。幸せを感じるわ…」



美咲は亡き旦那を見ているかのように、愛しそうにカゼを見る。




「………俺は兄貴じゃない」

「わかってる。海は風と違って優しくないし、冷たかった。愛してさえくれていなかったわ。…今ならわかる」

「………でも美咲さんは愛してたんだろ」

「さぁ…どうだったかしらね」



美咲は薄く微笑む。


カゼはそんな彼女を抱きしめたい衝動に駆られた。
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