祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「………でも1人じゃ心細いかもしれないし」



カゼの態度に怒りを覚えたカンナは、掴んでいる腕を払いカゼの胸を押した。





「何なの!?カゼはまだお義姉さんの事好きなわけ?今は私とデートしてるんだから他人なんかほっときなさいよ!じゃなきゃ私、帰る!!」




息をあげながら怒鳴るカンナをカゼは睨んだ。





「………カンナがそんな冷たい人だとは思わなかった」



カゼはそう言うと美咲の元へ向かい、そのまま駐車場へと消えた。


1人置き去りにされたカンナは、買ったばかりのCDが入る袋を落とすと、呆然とカゼが消えていった方を見つめる。




「…カゼのバカ。もう知らない!」



カンナは落とした袋を拾う事なく、店から出た。




外は強い風が吹いている。


カンナは手を伸ばし、空を掴むと虚しさがこみ上げてきた。


風が掴めないように
カゼの考えも掴めない。




虚しさを噛み締めながらカンナはタクシーを停めるとタクシーに乗り込み、家に向かった。







その頃、美咲の住むマンションにいたカゼ。


美咲の部屋は散らかっていて、キッチンも使われた食器がそのままシンクに置かれていた。
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