祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「………美咲さん、仕事は?」

「無断欠勤してる。だからもうクビね」

「………生活費とかどうするの?」

「うん。私ね、実家に帰ろうと思って。だから風ともさよならね」



美咲は散らかる部屋を少し片付け始めた。



愛する人の死に生きる気力を失した美咲。




「それより風はいいの?一緒にいたの彼女でしょ」

「………うん、大丈夫」

「そう。でも大切にしてあげなきゃ駄目よ?女の子は傷付きやすいんだから」



美咲の言葉を聞いたカゼは、頭を掻くと携帯を取り出しカンナにメールを打ち始めた。


美咲はメールを打つカゼを見つめると、カゼの胸に抱き付いた。




「海っ…海……」



カゼに海を重ねた美咲は、海の名前を呼びながら泣き始めた。



見た目が海にそっくりなカゼが、海に見えて仕方なかったのだ。





「………美咲さん。いや、義姉さん。兄貴はもういない。俺は倉木海じゃなくて風だ」



カゼはそっと美咲の体を離す。
< 217 / 479 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop