祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「…前みたく抱いてよ、風。…私…寂しいの」



潤んだ目でカゼを見つめる美咲。


カゼは微笑むと、ゆっくり首を横に振った。




「………ごめんね。今俺が抱きたい寂しがってる女の子は、彼女だけだから」

「そんなに彼女が大切なの?」

「………うん、大切だよ」



カゼが頷くと、美咲はスッとカゼから離れた。




義理の姉である前にイトコの美咲。

カゼは身内の1人として美咲を見れるようになっていた。



今、愛しているのはカンナだけだから。





「………美咲さんは兄貴を愛しててあげて。俺と兄貴は似てるけど、兄貴は俺と違って出来た人だった。ちゃんと…美咲さんを愛してたよ」



カゼはそう言うと、美咲の部屋を出て行った。




車を停めている駐車場に戻り、車に乗るとカゼはカンナに電話をかけた。

カンナはすぐに電話に出る。




「………カンナ?ごめんね」

「もう知らない!私、ケンとキヨがいちゃついてる中に1人でいるの気まずいんだからね!!」

「………今日俺らもいちゃつけばいい」




カゼは電話口でカンナが照れてるだろうなと思い、笑った。
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