祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「ごめん、ケン。ちょっとだけ…1人にしてくれる?」



抱きしめ合ったまま泣いていたキヨは、ケンから離れるとケンに背中を向けた。




「…うん、わかった。じゃあ家に戻ったら電話して?俺、カンナの様子見てくるから」



キヨが頷いたのを見たケンは、走ってカンナの元へと向かった。




1人になったキヨは、段々と雲が増えていく空を眺めていた。







どうして人は離れていくの?

どうして人はいなくなるの?

どうしてみんな思い出になっちゃうの?




この世界には

永遠に変わらないものはないの?




私の気持ちだけが変わらないまま

取り残されてるみたい…。





「…カゼ。カゼは私を信頼してるから、何でも話すって言ってくれたよね。…だから私もカゼには全てを話すよ」



キヨは誰もいない場所で、空に向かって呟き始めた。





「あのね。私、本当は……」



するとガサッという物音が聞こえキヨが振り向くと、そこにはイノリが立っていた。




「…キヨか?お前、こんな所で何してんだよ」

「イノリこそ何でそんな所にいるのよ」

「カゼの事考えてたらいつの間にかここに来たんだよ」

「私もそうだよ」




イノリはキヨの隣りに立つと空を見上げる。
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