祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
暫く歩いていると、草むらから物音がした。

物音がする方を凝視すると黒い影が横切る。



田舎だけあって蛇や猪がたまに出没するのを知っているキヨは青ざめた。




「きゃあああ!!!!」

「…………キヨ?」



キヨが涙で滲む目を開くと、そこには泥だらけのカゼが立っていた。




「…カゼ?もうどこ行ってたのっ!!心配したんだよ?」

「………危ない。キヨ1人で夜歩くのはよくない」



カゼは泥まみれの手でキヨの頭を撫でる。


キヨはカゼを見つけた事と、カゼの手の温もりに安心して涙が溢れてきた。




「うわぁぁん!!恐かったぁぁ!夜やだぁ〜」

「………ありがとう。恐がりなのに探しにきてくれて。…キヨがいなくなったら今度は俺が探すよ」




カゼはキヨが泣き止むまで頭を撫でながら、零れ落ちて来そうな星々を眺めていた。




「………ねぇキヨ。キヨはもし流れ星が本当に願いを叶えてくれるなら何を願う?」



もし流れ星が本当に

願いを叶えてくれるなら

何を願う?





「願い?」



キヨがカゼを見ると、カゼの瞳にはキラキラと星が反射していた。




「私は大きくなったら世界一の美人になって、イの付く人のお嫁さんになりたいな」

「………ははっ。大丈夫、キヨは美人になるよ。俺が保証する」




カゼとキヨは満天の星空の下、笑いあっていた。
< 25 / 479 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop