祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「カゼはキヨに優しいわよね。無理しなくてもいいのに」

「………食べれるよ」

「こいつは食いもんなら何でもいいんだよ」



イノリはそう言うと飲み物を買いに向かった。

キヨはその後を追う。




「カゼ、大丈夫?折角キヨが作ってくれたけど…これはちょっとなぁ」

「………見た目より味。味より愛情」



カゼの言葉にケンが首を傾げると、カンナが笑って訳し始めた。




「料理は見た目より味だけど、その味より作った人の愛情が1番大切だって言ったのよ」



カンナの言葉を聞いたケンは、朝早くから眠たい目を擦り、おにぎりをむすぶキヨの姿を思い浮かべると、食べかけのおにぎりを口に入れた。


さっきより美味しく感じた。





「イノリ!イノリ、あれ欲しい」

「あー?…仕方ねぇな」



飲み物を買いに来たキヨとイノリは、お面が並ぶ出店の前で立ち止まる。




「どれが欲しいんだよ。これか?」

「やだ!気持ち悪い」

「じゃあ俺はこれにしよう」



イノリが変な恐竜のお面を顔につけると、キヨはイノリを指差して笑った。



キヨは猫のキャラクターのお面を買い、イノリと手を繋いで歩く。



もういい歳なのにお面を付けながら歩いている2人を、風に吹かれた花びらが包み込む。
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