祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】

3・築きあげた繋がり

その日の夜更け、キヨはイノリの部屋を訪れた。



「不倫ねぇ。カゼがそんな事してるとはな」

「でもカゼの気持ちもわかるよ。1度好きになったらそう簡単に諦められないもの」



キヨはイノリに今日の出来事を話した。


本当は胸の奥に閉まっておくべきなのだろうと思ったが、1人で閉まっておく事が出来なかった。





「でも不倫をするって事は、その女もカゼの事好きって事だよな」


「好きじゃなかったらわざわざ旦那の弟と不倫しないよね。バレたら1番ややこしくなる存在だもん」


「カゼの兄貴は地元にいんだろ。なんで嫁がこっちにいるんだ?」


「知らないよ。カゼに会いに来てるんじゃない?」


「わざわざあの田舎から新幹線や電車を乗り継いで?ありえねぇだろ」



イノリはゲームをしながら呟いていた。


キヨはベッドに座りながらゲームをするイノリを見つめる。




「今度さ、私とイノリだけで地元帰ってみる?カゼのお兄さんに会いに行けば何かわかるかもしれない」


「2人で帰ったらカンナ達に怪しまれんだろ!帰るなら5人で帰ろうぜ。その時こっそり役場行けばよくね?」


「そうだね。イノリが私と2人が嫌なんだったら仕方ないか…」


「あーっ!やられた!!キヨがつまんねぇ事言ってっから」




イノリはコントローラーを投げると床に寝そべった。




「つまんねぇって何よ!!バカ!!鈍感!」



キヨは寝そべるイノリを蹴飛ばすと、部屋から出て行った。




「……この俺が鈍感ねぇ」




イノリは頭だけ動かし、キヨが出て行ったドアを見つめていた。
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