祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
夏休み最終日。


キヨはイノリと共に、バスケットゴールのある公園に来ていた。



「イノリは中学・高校とバスケ6年間もやってたんだよね」

「まぁな。カゼほど力を注いではなかったけどな」

「背高いからイノリに向いてるよね、バスケ」



キヨがバスケットボールをゴールに向かって投げると、カゴに弾かれイノリの頭にぶつかった。




「…いってぇ〜!!下手くそ!」

「中学の3年間バスケやってたのになぁ…私、運動音痴なのかも」



キヨはボールを拾う。




「高校は部活入らなかったし、筋力衰えたのかな?」

「お前は部活どころじゃなかったもんな。勉強に追われてて」



キヨは高校1年生一学期の成績があまりに悪く、親に部活を辞めて勉強しなさいと言われていたのだった。




「ね、イノリはダンク出来る?」

「は?…あぁどうだろ。多分出来ねぇな。ジャンプ力ねぇし」

「私、ダンクしてみたかったんだよね。150cmしか身長ないから到底無理なんだけど」



キヨが苦笑いするとイノリは屈み、キヨを肩車した。




「わわっ!!何よ、いきなりっ…」

「これならダンク出来るだろ。ほら、やってみろよ」



イノリが肩車したままゴールに近付くと、キヨはゴールに向かって手を伸ばした。

しかし微妙に届かない。




「イノリ、届かないよ!!ジャンプジャンプ!!」

「お前はどんだけチビなんだよ!仕方ねぇな」




イノリは飛び跳ねるとバランスを崩し、キヨを肩車したまま倒した。


公園には鈍い音が響く。
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