祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「あっ!小さい頃、私一度だけカゼが思いっきり笑ってるの見た事あるかも」

「えっ!?何に笑ってたの!?」



キヨとイノリとケンは、カンナの顔を見る。




「それが思い出せないのよね。何だったかしら」



どうすればいいかわからない4人は最終手段に出た。


4人はカゼの体を掴むと脇や足の裏、わき腹をくすぐり始めた。




「………マッサージしてくれてるの?ありがとう」

「ちげぇよ!あーっ!!もう面倒くせぇ!!カゼ、笑ってみろ」



くすぐりさえ効かないカゼに腹が立ったイノリは、カゼの口を掴むと指で無理矢理口角を上げる。





「………ふぉへふぉふぁふぁふぁへふぁひぃふぉ?(俺を笑わせたいの?)」

「そうだ!涙流すくらい爆笑してみろ!!」



イノリがカゼの口から手を離すと、カゼはニッと口を開いた。




「目が笑ってないよ、カゼ」



ケンがそう言うと、カゼはギュッと目を瞑る。




「ダメね。笑顔というより、泣き顔になってるわ」

「そういえばカゼが泣くのも見た事ないかも。イノリとカゼはあんまり泣かないもんね」



笑顔から泣き顔の話に変わった時、カゼがクスクスと笑い始めた。
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