祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「イノリっ…!!イノリ…」

「大丈夫。…大丈夫だ。俺がいるから安心しろ」



イノリはキヨを優しく宥めると、自分が着ているTシャツを脱ぎキヨに着せた。




「…ふっ。お前が俺のTシャツ着るとワンピースみたいになるな。ダボダボ」

「…汗くさい」

「ダンス踊ったんだから仕方ねぇだろ!それくらい我慢しろよ」

「うん。…イノリの匂い、安心するから好き」



嬉しそうにTシャツに頬擦りするキヨの頭をがしがしと撫でると、イノリは服を着に教室へと向かった。





「キヨ大丈夫?」

「うん、カンナもカゼもケンもありがとう。…私みんながいてくれて幸せだよ」

「私もよ」

「………いつでも助けるからね」

「俺も♪」



4人は笑いながら抱きつき合っていた。





その頃、教室で制服に着替えているイノリの元に鈴木がやってきた。


鈴木は息を荒らしながら片手にハサミを持っている。




「何やってんだ、お前」

「ウザいんだよ!!お前も倉木も黒花も…!!」

「何でもいいけど、お前の苛立ちは俺を刺したら収まるのか?」

「あぁ!!その通りだよ!!」



ハサミをちらつかせる鈴木を見てイノリは溜め息をついた。




「そんな事したからってキヨは手に入んねぇぞ」


「お前に何がわかる!清田さんといつもそばにいれて、好きな時に触れて…俺なんか入学してからずっと好きなのにお前らのせいで今日まで話せなかったんだぞ!!幸せ者のお前に何がわかるんだよ!!」



鈴木はそう叫ぶとイノリに向かって走ってきた。
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