祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「お前何か知ってるだろ?何があった。話せ」



イノリは鋭い目でキヨを見る。

キヨは俯きながら話し始めた。




「……カンナが…カゼに告白したんだと思う…」

「マジか。何で今なんだよ…タイミング悪ぃな」



イノリは髪を掻くと煙草に火をつけ、煙を噴かした。




「もう限界だって言ってた。伝えなきゃ辛いって。…カゼはあんなんだからカンナの気持ちを知っても今まで通り接してくれるって信じてたんだよ」


「わかってねぇな。カゼは男3人の中で1番デリケートだよ。あいつは気持ちを知りながら今まで通り接したり出来ないと思うな」




イノリの言葉にキヨは涙ぐむ。




20年間築きあげた繋がりが切れてしまうような気がした。


こんなに簡単に、あっけなく…




「カンナかカゼがあの家を出て行ったりしないよね!?そんな事ないよね!?」



キヨは堪えきれない涙を流しながらイノリの袖を握り締める。


イノリは困ったように微笑みながら首を横に振った。





「人の気持ちはわからないし、行動を縛る事も出来ない。ただそうならないようにしてやるのが俺らの役目じゃねぇの?」



イノリはキヨの涙を袖で荒く拭うと、優しくキヨを抱きしめ背中をポンポンと叩いた。




「大丈夫だよ、俺らの関係はそんなに脆くねぇ」




イノリの言葉にキヨは何度も頷いた。
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