祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「カゼ!?風邪ひくよ」

「………魚いないかなって思って」

「いるわけねぇだろ!!こんな波打ち際に」



イノリに否定されたカゼが渋々海からあがると、キヨはカゼにハンカチを渡した。



「濡れたまま風に当たったら体冷えちゃうよ。それに足拭かないと靴履けないでしょ?」

「………うん、ありがと」



カゼはキヨのハンカチで足を拭く。


片足で立っていたカゼはバランスを崩し、隣に並んで立っている4人に向かって倒れた。


5人は浜辺に将棋倒しになる。




「いってぇ!何やってんだよ!!」

「………バランス感覚がないみたい」

「もー!!砂まみれになっちゃったじゃんか」



5人は砂まみれになった体を見て、何だかおかしくなってきた。




「…ふっ!!あははは!!私達もう大学生になるのに何やってるんだろうね」

「本当よ。しかも3月の海で」




冷たいけど優しい海風が、誰もいない海で座りながら笑い合っている5人の間をすり抜けた。



暫く浜辺にいた5人は体が冷えてきたのに気付くと、手を繋いでホテルへと戻って行った。
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