祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「まだまだかかるから寝てていいぞ」

「まだまだって…。本当にどこ行くのよ!?」

「それは着いてからのお楽しみだ」



キヨは不服に思いながらも目を瞑った。

少し開けた窓から入り込む風が心地良かった。



風に靡くキヨの長い茶色い髪から香る匂いを感じながら、イノリは優しく微笑んでいた。





カゼが事故ってから、車を買い直す事に躊躇した4人。

しかし、4人は同じ型の車を買う事で5人の思い出を残す事にしたのだった。





空が薄明るくなる頃。

2人を乗せた車はある場所に到着した。



「キヨ、着いたぞ」



イノリに揺さぶられたキヨが目を覚ますと、そこは5人でよく星を眺めていた土手だった。


イノリと愛が繋がった場所。



辺りに吹き渡る風が懐かしい匂いを運ぶ。



何故だかキヨは泣きたくなった。




「よくガキの頃、5人で並んで寝っ転がってたよな」


「うん。懐かしいね。私が初めてここに来たのは、カゼが失踪した時なんだよ。カゼと2人で星に願いをかけたの」





“………キヨ。

もし流れ星が

本当に願いを叶えてくれるなら

何を願う?”






風に乗って、あの頃のカゼの声が聞こえた気がした。





「カゼはその時、お兄さんの事を祈ったんだって。このお揃いのネックレスを隠されたからって言ってた。カゼはそれだけ苦しんでたんだよね。…イノリはボンキュッボンの女の子と付き合いたいとかバカな事言ってたけど」


「よく覚えてたな。あんなの嘘に決まってんだろ。心の中では違う事願ってたよ」




キヨがイノリの顔を覗くと、イノリの顔は真っ赤だった。
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