祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「何でそんなに真っ赤なの?」

「うるせぇ!…それよりお前はその時何て願ったんだよ?」

「えっ!?私?」



キヨがイノリと同じくらい真っ赤になって俯くと、イノリはキヨを優しく抱きしめた。




「言えよ。聞きたい。…お前の望みは全て知りたい」

「…絶対笑わない?」

「笑わねぇよ。早く言え」



キヨは深呼吸をすると、少し間を開けてからカゼしか知らなかった昔からの願いを呟いた。




「…“イ”の付く人のお嫁さんになりたいって願ったんだよ」



キヨがそう呟くとイノリはキヨを体から離した。

いつになく真剣な目をするイノリ。



キヨはまたイノリに拒絶されるのではないかと不安になった。




「…それは俺にしか叶えられない願いだな。そして俺の願いもお前にしか叶えられない」

「え?」



首を傾げるキヨの左手を取ると、イノリはスーツのポケットから指輪を取り出し、キヨの薬指に嵌めた。




小ぶりだけれど、綺麗に輝くダイヤが埋め込まれたエンゲージリング。
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