祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
「お待たせ。……ん?キヨ?どうしたの?」



キヨの前に車を停めたケンは車から降り、キヨに近付く。



ケンがキヨの顔を見るとキヨは、何とも言えない表情で涙を流していた。





「え!?何!?どうしたんだよ!何かあった?」

「わからない…私っ……イノリがわからないよ」



キヨは溢れてくる涙を手の甲で拭う。


何が何だかわからないケンはオロオロし始めた。




「イノリに何かされたの?何か言われた?」




問いに答えないキヨの頭をケンは撫でた。





「キヨは本当にイノリが大好きだなぁ。こんなに泣いちゃうくらいなんだもん」


「…好きじゃない。イノリなんか大嫌い!」


「嫌よ嫌よも好きの内って言うでしょ?好きなんだよ。自分の気持ちに嘘つくのは辛いよ?…俺がそうみたいに」




ケンは切なそうにキヨを見つめると、ニカッと笑った。




「っと、気晴らしにドライブでも行くかぁ?眠くなったら寝ていいから」



キヨはコクンっと頷くと助手席に乗った。


ケンはキヨの頭をくしゃっと撫でると、エンジンをかけ車を発進させた。




寝静まった街は、ただでさえ人気がない為、暗く何の音もない静寂の世界だった。


響くのはエンジンの音だけ。
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