祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
無言の車内。

暫く車を走らせていると見慣れた後ろ姿が見えた。




「カゼ!?何1人でほっつき歩いてんだよ。カンナは?」



ケンが窓を開け、カゼに話し掛けるとカゼは力無く首を横に振った。




「みんなしてなんなんだよ今日は。…とにかく乗れよ」



ケンに促されたカゼは後部座席に乗り込んだ。


静かな空気に耐えられないケンはCDをかける。




「…カゼ、カンナに聞いたのか?お兄さんのこと」



ケンが遠慮がちに聞くとカゼは重い口を開いた。




「………聞いた。俺が殺したようなもんだ」

「殺した?えっ!?お兄さんもしかして…」



キヨが目を見開きながらカゼの顔を見ると、カゼは頷いた。


まさかの結果を招いてしまったことにキヨは涙を流す。




「お兄さんの事はその…何て言っていいかわからないけど、仲が悪かったからってそう自分を責めるなよ。カゼが悪いわけじゃないんだし」


「………俺が願った事だ」




カゼの言葉の意味がわからないケンは首を傾げる。





「そうだ。お兄さんの奥さんには知らせたのか?」

「………美咲さんは兄貴のこと何も知りたくないと思うよ」

「どういう事?」




ケンとキヨはルームミラー越しにカゼの顔を見る。
< 70 / 479 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop