祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
気まずい雰囲気に耐えられず、キヨはケンから顔を反らし眠った振りをする。



ケンは顔を背けるキヨの髪に触ろうと伸ばした手を引っ込めると、前を見て運転に集中した。




「…あっ!そうだ、カゼ!!カゼ起きてる?カンナはどうしたんだよ」

「………カンナは病院じゃないかな」



ケンに呼ばれたカゼは眠たそうに目を擦る。




「病院って…置いてきたの?」

「………カンナは今、俺といたくないと思うから」

「よくわかんないけど電話してみてよ。心配じゃん」




ケンはカンナに電話を掛けると、カゼに自分の携帯を投げる。





「………カンナ?今どこ」



通話が繋がった音が聞こえたが、無言のカンナに話し掛けるカゼ。




「………カンナ?聞こえてる?」

「…イノリといる。切るね」



カンナはそれだけ言うと通話を切った。


車内には通話の切れる音が響く。




「カンナ何だって?」

「………イノリといるって」



カゼの言葉を聞いたキヨは目を開き、顔をあげる。




「ヤバいな。今2人でいるって事は……」


「………考え過ぎだよ。イノリもカンナもそんな軽い人間じゃない。ましてはカンナがキヨを裏切るような事する?」


「でも何か嫌な予感がする。…行こう!」




ケンはイノリの家へと車を走らせた。
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